あれだけ夜にフラフラするなと言ったのに、轟と八百万に挟まれながら現れたは、クソみたいな薄着をしていた。上着のひとつでもあれば貸してやれるというのに、残念なことに爆豪はTシャツ一枚だった。
 そもそも、揃いも揃って、なんて馬鹿げた格好をしているのだ。
 他人の振りをしたくなる。爆豪は苦虫を噛み潰したように、顔をしかめた。

 不安げなと目が合って、爆豪はふいと視線を外した。肌色が多すぎて、直視してはいけない気がした。

「勝己くん!」

 胸に飛び込んできたを受け止めてから、デクたちのソワソワした視線に気づく。爆豪は目だけで視線を蹴散らした。

 引き剥がそうとして掴んだの肩が、震えていた。
 たったそれだけのことで、爆豪は躊躇してしまう。掴んだ肩を引き剥がせばいいのか、それとも引き寄せればいいのか、判断が鈍る。

 細い肩だ。ヒーローとなるべく、研鑽された肉体ではない。
 爆豪はの肩を掴んだまま、デクを睨む。だからこそ、こんなことに巻き込むべきではないのだ。
 ──それを、爆豪はよくわかっている。

「……手を、繋いでもいい?」

 が爆豪の胸に頭を預けたまま、小さく問う。
 爆豪はうんともすんとも言わずに、肩を掴んでいた手で、の手を握ってやる。この手を握るたびに、小さくて柔いと感じるし、守らなければと思う。
 がおもむろに顔をあげる。涙を湛えた瞳が、爆豪を見て、そのまなじりが緩む。

「あったかい。勝己くんだ」

 へへ、とがはにかんだように笑って、小さく鼻をすすった。電話口でも泣いていたの瞼は、腫れぼったい。
 ぽろりと落ちた涙を、爆豪はただ見つめていた。

「溢れて、落ちる」