「わあっ、勝己くんが制服着てる! レアだあ」
そう言ってはしゃぐを、爆豪は横目で見やる。
上から下まで視線を走らせて、見慣れないその制服に爆豪もまた、新鮮さを覚える。
ひざ丈で揺れるスカートが、校則をきちんと守るの真面目さを表しているようだった。ちょっとやそっとじゃ下着が見えることもなさそうで、爆豪は知らず安堵する。
鞄を手にする反対側の手には、重そうな買い物袋を持っていた。おおかた、学校帰りにおつかいでも頼まれたのだろう。
買い物袋を貸せと言うに、は「いや、今日は、牛乳とか入ってて重いから」と、荷物を奪われまいと守りのポーズをとった。爆豪にとってみれば、隙だらけである。
あっという間に買い物袋を奪われて、が唇を尖らせている。
小走りで後ろについてきたを、爆豪はそっと尻目に見やる。
デクの片割れというには、似ていない。妹と言われれば納得するものの、双子と聞けば驚くだろう。頬には薄らとそばかすが散っているが、肩を滑る髪には癖がない。
こんなふうに歩いていると、放課後デートのよう──爆豪はふと浮かんだ考えを、脳内で爆散させる。のんびりと隣に並んだには、きっとそんな考えなど微塵もないのだろう。
「ねえねえ」
が爆豪の肩をつついて、背伸びする。
が片手を口元に添えると、爆豪の耳に「勝己くん、すっかり有名人だね」と囁く。いちいち距離が近い。ちらりとを見下ろすと、何も考えてなさそうな呑気な笑みが返ってくる。
昔からこうだ。
爆豪のことを信じて疑わない。
勝己くん、すっごく頼りになるよ──ふと、の言葉が脳裏を過ぎる。頼られるのは、別に悪い気はしない。しかし、安心しきられると、それはそれで異性として意識されていないようで気に食わない。
あの夜、に怖い思いをさせて、泣かせてしまったことは、爆豪の胸に棘となって刺さってなかなか抜けてくれなかった。
思い出すと、腹が立ってくる。そのうえから「体育祭優勝おめでとう」ときた。あんな優勝は、何もめでたくやしないのだ。
苛々する爆豪の隣で、がおろおろしている。
そうとわかっても、爆豪は己の怒りを鎮めることができなかった。
「ね、勝己くん。ちょっと寄り道しよ」
それでも、の手を振り払えないことを、爆豪は知っている。