「失礼いたします」

 何度も足を踏み入れたことのあるレオンの私室である。夜分遅くに訪ねたことだってある。下げた頭をすぐにはあげられずに、じっとつま先を見つめていれば、レオンがくすりと笑い声を漏らした。

「そんなに緊張しなくたっていいだろ。ほら、こっちにおいで」
「……き、緊張くらい、させてください」

 む、とは少しだけ唇を尖らせる。
 レオンが犬や猫を呼ぶような気軽さで、を手招きする。寝台の上でくつろぐレオンには緊張など欠片も見られず、は少しばかり悔しいような気持ちになる。はいつになくぎこちなく、寝台へと足を勧めた。

 天蓋から垂れる薄絹の幕を手で払い、寝台から身を乗り出したレオンが、驚きに身を竦めたの腕を掴んだ。「あ……」と、唇からこぼれ落ちる音が途切れ、は寝台に座るレオンに抱きすくめられる。

「れ、レオン様」

 胸元に丁度レオンの頭が位置して、はわずかに身を捩った。腰元に回った手がエプロンの結び目を解いて、背中の素肌に触れる。びく、と震えた身体が思わず逃げ腰になるが「だめだよ」と、レオンの言葉と手が制止する。
 ふくらみからレオンの瞳がのぞく。射すくめられたの身体が、びくっ、ともう一度震える。

「申し訳ございません……」

 背骨を辿る指先が肩甲骨に触れ、服の隙間へと差し込まれる。もう一方の手が前へ回って、ふくらみを確かめるように胸元をつつく。

「このまま脱がすよ」
「は、はい」

 答える声は上擦っていた。いつも脱ぎ着をさせるのはのほうなので、不思議な気持ちになる。
 レオンの指が触れた肌が、じんわりと熱をもつような感覚を覚える。身じろぎの一つすらも許されないような気がして、は殊更緊張してしまう。しゅる、と衣擦れの音とともに、素肌が晒されていく。
 むき出しになった肩を撫でて「強張ってるね」と、レオンが呟く。責めるような響きはなかった。
 胸を覆う下着を取り払って、レオンが興味深げに乳房へ指を沈めた。いやらしい手つきではなかった。ただ、自分にはない脂肪の塊がそこにあるからつい手が伸びた、といったふうだった。たぷ、と手のひら全体が乳房を持ち上げる動きをする。

「へぇ、何か詰めて盛ってたわけじゃないんだ」

 さらりと失礼なことを言ってのける。いまの今まで疑われていたと思うと、複雑である。
 答えに窮するに気づいて「冗談だよ」と、レオンが可笑しそうに笑った。そこでようやく、からかわれたのではなく、レオンが緊張を解そうとしてくれたことに気づく。

 胸から腹部へと手が下りていって、腰元にたわんだ服をそのまま下ろしきってしまう。残された下着とガーターベルトへ指をかけて、ふとレオンが手を止めて顔を上げた。震えが走ったのは、寒さのせいではない。

「……いいんだね?」

 はすぐには言葉が出てこなくて、頷くことで答えた。そうして、身体の横に下ろしていた手をおもむろに持ち上げて、レオンの頭を胸に抱く。

「レオン様こそ、わたしなどでよろしいのですか?」
「言っておくけど」

 はあ、とレオンがため息を谷間に向かって零した。

以外は願い下げだよ」

 苦しい、と胸に埋まるレオンが不快そうに眉をひそめて、の身体を引きはがす。
 するりと背に回った指が滑って、お尻側から下着に指を差し込む。そして、ガーターベルトごとずり下げられてしまう。片脚を持ち上げると、そのままつま先までオーバーソックスを脱がせて、下着を抜ききる。
 秘部を隠すものがないのに、大きく脚を開かなければならず、は恥ずかしさに目を伏せる。

「ほら、反対も」

 レオンの指示通りに脚を入れ替える。するすると太ももまで覆うオーバーソックスが脱がされて、ついに丸裸にされてしまった。

「震えてる?」

 ふ、と笑った唇が膝小僧に触れた。「だって、恥ずかしいです」と、は目を伏せたま、蚊の鳴くような声で答えた。ふーん、とレオンの吐息が膝を撫でていく。
 脚を下ろすことを許可されて、は内心でほっと息を吐いた。

「おいで」

 つい先刻聞いた台詞と同じだったのに、それは全く別の響きを持っていた。は少し躊躇ってから、招かれるままにレオンを跨いで向き合う形で抱き合う。

「……まだ震えてる。普通、こっちが緊張すると思うんだけど」
「い、意地悪なさらないでください」

 くす、と小さくレオンが笑う。レオンの言う通り、ばかりが緊張しているし、恥じらっている。
 はレオンのすべらかな頬へと手を添えて、じっと瞳を覗き込んだ。「目は閉じればいい?」と、笑いを含んで問いかける憎らしい唇を、は己のそれで塞いでやった。薄らと目を開けて様子を窺えば、レオンの瞳はきちんと閉じられていてやたらと長い睫毛が見えた。

 はやわらかい唇の感触を味わうように、レオンの唇をやさしく食んだ。は、と息を呑みこむと同時に、舌先を伸ばしてレオンの唇に触れる。ぴく、と背に回されたレオンの指先に力が籠ったような気がした。

「んッ……!?」

 されるがままだったレオンが、ふいに口をわずかに開いて、の舌を食するように軽く歯先で挟んだ。思わず身を離そうとしたの後頭部を、レオンの手が素早く押さえた。
 逃げるように舌を引っ込めると、それを追ってレオンの舌が口腔内に差し込まれる。

「ん、ゃ……っふ、う……」

 ざらついた舌が上前歯の裏側を舐めあげ、ぞくりと甘い震えが走る。いまだにぎこちない動きしかできないと違って、レオンの舌はひどく器用に口腔内を這い回る。到底初めてとは思えなかった。
 気がつけば息が弾んでいた。頬に添えていた手は、レオンの首にしがみついている。

 じゅっ、と舌を扱くように吸いついて、唇が離れていく。はあっと大きく息を吐いたは、情けなくも涙目でレオンを見つめた。

「ねえ、服……脱がせてよ」

 わずかばかりに頬を上気させて、レオンが妖艶に微笑んだ。思わず、はごくりと喉を鳴らして唾を飲みこんだ。
 は震える指先をレオンの夜着へとかける。幸い、複雑なボタンなどないおかげで、容易に脱がせることができた。胸元が大きく開いた合わせ目に手を入れて、肩を抜いてしまえば、すとんと服が落ちて上半身が露わになる。

 白くて、肌理は驚くほど細かく、指先に吸い付いてくるようだった。は無意識にほう、と息を吐いた。
 はっきりとした喉仏に指を這わせて、綺麗に浮き上がる鎖骨を撫でる。線の細い、少年らしい身体つきをしているが程よく筋肉が付いている。魔道を得意にするとはいえ、剣も扱うからだろう。

 ふいに、の手首をレオンの手が掴んだ。はっと息を呑むと同時に、くるりと身体が反転して背が柔らかいベッドに沈む。さすが王族の使う寝台は、ひどく柔らかくて、ほとんど衝撃を吸収してくれた。おかげで痛みはない。
 を組み敷いたレオンが、口角を上げる。

、覚悟はいいね?」

 うんともすんとも答えていないのに、レオンの唇が重ねられて、言葉を封じられる。覚悟はしてきたつもりだったが、改めて問われて狼狽えるなんて覚悟が足りなかったのだろうか。

「ん……」

 レオンが微かに声を漏らした。ただそれだけなのに、ぞくん、と背筋に震えが走る。
 一度離れた唇が角度を変えて、より深く重なる。は混乱のあまり鼻での呼吸を忘れて、すぐに息を弾ませた。先ほどがしたように、唾液にまみれた下唇がやさしく食まれて、可愛い意趣返しをする余裕すらレオンにはある。

 シーツに縫い付けられていた手首が解放されても、の両手は力なく投げ出されたままだった。ぎゅっとやや強めの力で、乳房を手のひらが包む。

「っぅんン……!」

 重なった唇の奥からくぐもった声が漏れ出る。
 興味の欠片も示さなかった乳房の中心に、レオンの指先が伸びる。乳輪に沿って円を描くようにくるりと回る指先が、ぷるりと震えた先端にやさしく触れた。びく、と身体を震わせたは、反射的にシーツをぎゅっと握りしめた。
 口端からもどかしげな嬌声がこぼれても、唇は解放されない。ぬるりと濡れた舌が歯をなぞり上げて、やわい頬をくにゅりとつつく。引っ込めていたの舌を絡め取って、にゅるにゅると擦りあわされると、握りしめた拳から力が抜けてしまう。ようやく唇が離れて、ははあっと大きく息を吸い込んだ。

 やさしく撫でるだけの指先が、ふいにきゅっと乳首を摘み上げた。びり、と甘い刺激が痺れのように走って、は甲高い声を上げて喉を反らす。レオンの唇が、喉仏が位置するであろう箇所に押し当てられる。

「喉は動物の急所なんだよ。こんなふうに晒して、無防備だね」
「ぁっ……!」

 小さく歯が立てられ、ほんのわずかな痛みが走る。じんわりとした痛みを残すそこに舌が這い、それからまたやわらかい唇の感触がする。ちゅう、と吸い上げられると、先ほどとは種類の違う痛みが走った。

「んっ、あ、なに……」

 は困惑をもってレオンを見た。「もしかして、はじめて?」と、レオンが目を細めて、意地悪気に唇を歪める。

「まあ、こんなもの付けなくても、は僕のものだけどね」
「あ、あの……」

 は不安に喉元に手を這わすが、特に変わった様子はない。呪いの印でも刻まれたのでは、と一瞬でも思ってしまったのは、やたらと芝居がかった台詞を口にする新たな同僚の影響かもしれなかった。

「大丈夫。ちょっと恥ずかしい思いはするかもしれないけどね」
「え……?」
「襟も詰まってるし、そんなに気にすることないよ」

 それ以上の説明は不要、とばかりにレオンの唇は言葉を紡ぐのをやめて、肩口に触れる。
 軽い口づけを落としながら、レオンの唇が胸元へと迫っていく。ふくらみを持ち上げて、レオンが唇を寄せる。ぷくりと硬く立ち上がった乳首にちゅっと小さな音を立てて、口づける。

「ふ……あ、ん……」

 ぱくりと乳首を銜え込んだ口内で、飴玉を転がすように舌先が絡みついてくる。レオンの指が絶え間なく、もう一方の乳首へと刺激を与える。歯と唇で食まれて、はびくっと跳ねあがるように腰を反らす。覆うもののない唇は、絶え間なく嬌声をはしたなくも上げるばかりだ。

「あっ、ぁ、は、ア」

 レオンが唇をずらして、ふくらみの上部に吸い付いた。ぴり、と痛みが走るが、すぐに甘い痺れに変わる。

「レオンさま……」

 唇による乳首への愛撫が止んで、はようやくまともに言葉を紡ぐことができた。さらりとした指通りの髪に触れる。レオンが顔を上げた。

「わたしにも……ご奉仕させてください」

 レオンがはじめて戸惑うような顔をした。


 
 下衣に膨張が見られて、はそうっと布越しにそこへ手を這わせた。お前じゃ勃たないよ、という事態にはならなかったことに心底安堵する。
 は一度視線を上げてレオンを見たが、瞼は下ろし切られていた。下衣に指をかければ、レオンが腰を浮かせてくれるので下着も一緒に脱がせてしまう。

「失礼いたします」

 陰茎に手を添えると、その硬さと熱さが伝わってくる。は啄むように、ちゅっと先端に口づける。

「っは……」

 レオンが漏らした吐息は熱っぽくて、の体温までも上昇するような気がした。
 根元から先端にかけて、唾液を絡ませるようにしながら舐めあげていく。再び先端までたどり着くと、は大きく口を開けて亀頭を含む。唾液でぬるりとすべる陰茎を手のひらで扱いて、つるりとした亀頭に舌を這わせる。

 ぴくん、と時おり陰茎が跳ねるのを感じながら、は口淫に励む。あおむけに横たわっていたレオンがわずかに上体を起こして、の髪をかきあげるようにこめかみから指を差し込む。

「ねぇ……」

 は口に銜えたまま、レオンを見上げた。女性のように、いや女性よりも美しい顔立ちのレオンが、薄らと汗を浮かべて頬を紅潮させている様は、思わず目を逸らしてしまうほど扇情的だった。

「せっかくだから、その大きな胸も使って見せてよ」
「む、胸ですか?」

 たじろぐに経験がないと気づいて、レオンがふっと笑む。「胸で挟んでみなよ」と、指示通りに戸惑いながらもは両手で乳房を寄せるようにして、レオン自身を挟み込む。

「唾液を垂らして」
「ん……」
「そう、そのまま胸で扱いて」

 たっぷりと垂らした唾液が潤滑剤となって、ぬるぬるとすべる。やわらかな脂肪に埋まる男根の先端が顔を出している。ひどく淫猥な光景で、それをしているのが自分自身だと思うと、どうしようもない羞恥心に襲われる。

「舐めて」

 は舌先を伸ばして、亀頭を舐める。胸を動かしながら口も、というのはには難しく、どちらかに集中すると一方がおろそかになってしまう。
 はあ、と息を吐いて一度動きを止めると、レオンの手がやさしくの髪を梳いた。

「もういいよ。ありがとう」
「す、すみません。上手くできなかったでしょうか……」
「いや、十分気持ちよかったよ」

 レオンの微笑みは天使のようだった。脇に差し込まれた手が、の身体を持ち上げる。寝そべるレオンの上に乗るような形になって、は身じろぎする。
 する、と背を撫でた手が、腹部に回って陰部に伸びていく。指が撫でるように触れて、くちゅりと音を立てる。

「ひゃんっ」

 びくん、と背が反る。の反応を、レオンが面白そうに眺める。

「ふうん、濡れてるね」
「あ……ぁ、ん……は、う………」

 レオンの人差し指が膣内に滑りこむ。指摘された通り、そこはすでに濡れそぼっていた。その先を期待するかのように、指一本ですらも呑み込むように膣壁がうねる。

「どこが気持ちいいのかちゃんと教えてよ」

 はあっ、とは吐息を震わせる。

「浅いところの、お腹側、」
「……ここ? 少しざらついているね」

 なかに埋め込まれた指がくっと曲げられて、探るように膣壁を擦る。下腹部の奥が燃えるように熱い。ぞわぞわと腰のあたりを広がる甘い痺れが、全身を侵していく。

「奥は?」

 自分では届かない、子宮の入り口まで指が入り込んで、きつく狭まるなかを解すように動く。

「あ、ア、ん……奥、も、気持ちいいです」

 無意識に腰が揺れてしまう。
 くす、とレオンが小さく笑い「ぐずぐずだね」と、言った。「指がふやけそうだよ」と続けて、意地悪く目を細めた。
 奥の方から手前へ戻ってきた人差し指が、こりこりとの好いところを擦る。びくっ、と小刻みに震える身体が、ふいに陰核へ刺激を受けて一際大きく震え上がった。

「きゃうッ!」
「ここも弱い?」
「っア、はぁッ、ああんっ」

 窺うような視線を向けられているとわかっても、答えることができなかった。小さく震えながら身を竦ませるの耳に、ふっと息を吹きかけられる。

「っひ、ああっン!」

 びくびくと大きく身体が震えるのを、抑えるすべを持たない。くす、と耳元でレオンが笑うのがわかった。そうして、わざと耳穴に吐息が触れるようにしながら「いれるよ?」と、レオンが囁く。はこくこくと何度も頷いて、答える。
 指が抜かれて、入り口にレオン自身が宛がわれる。はあ、と息を吐いたのはどちらだったのか、よくわからない。

 くぷ、と亀頭を呑み込んで、そのままレオンに支えられた腰が落とされていく。「あ、あっ、あァ」ずぷぷ、と男根が埋まっていくのと同時に、は細切れに嬌声を漏らしながら身を震わせる。

「はっ、ぁ、待っ……や、だめ、これ……ふかい………!」

 自重がかかって、男根が奥深くまで届く。正常位しか経験のないは、ごりっと子宮口を押し上げる感覚から逃れるように、腰を引いてしまう。

「待たないよ……ッ」

 レオンの手が腰を掴んで、下から突き上げる。

「っふ、あっん! あっ、や! ああッ!」

 ごつごつと最奥を抉られて痛みと苦しさを覚えるが、それ以上に強い官能に襲われて、はあられもない声を上げてよがる。力が入らずにくたりとレオンに凭れかかれば、ぎゅっと抱きすくめられる。熱を孕む荒い呼吸が耳元に掛かって、ぞわりと肌が粟立つ。
 動きは激しさをひそめたが、深いところに埋まった男根が、ぐりぐりと子宮口を押しあげてくる。

「ん、う、はあっ……!」
……」
「だ、め……みみ、っ……んンぅ」

 レオンの掠れた声が、ダイレクトに脳まで響くようだった。そうして、脳みそをどろりと溶かされていくような気がして、官能の波がを呑み込んでしまう。

「やッ、や……っはあ、……あ、ああっ、ん!」

 はレオンにしがみついて、びくびくと身体を震わせて達する。
 ぐずぐずに蕩けた膣内がきつく収縮して、レオンが耳元で息を詰めた。あまりにあっけなく達してしまって、恥ずかしさと情けなさに顔を上げられずにいれば、ちゅっと耳朶にキスをされる。ぴくんと身体が揺れた。


「ご、ごめんなさい、わたし」
「可愛いね」
「え……」

 およそ、レオンの口から紡がれた言葉とは思えなかった。呆気に取られていると、小さく笑ったレオンが身体を反転させてを押し倒す。
 ぽた、とレオンの身体から汗が落ちて、の肌の上で弾ける。
 レオンの手がの頬を撫で、するりとずれて耳に触れる。やわやわと耳朶を指先で弄られただけで、は身悶えしてしまう。一度引き抜かれていた男根が、もう一度のなかへと押し入ってくる。まだ、達した余韻が残っていて、は喉を仰け反らす。

「っふ……!」
「今度はさ……イく顔、ちゃんと見せてよ……っ」

 レオンが腰を勢い良く打ちつける。
 ものすごく羞恥心を煽られて、思わず顔を手で覆うが、指を絡めてシーツに縫い付けられる。

「やあっ、レオンさまぁ……っ!」
「顔、ちゃんと見せて、」
「はっ、あ、レオ……さ、ま……!」

 きゅうううと狭まっていく膣壁をどうすることもできずに、はきつく目を瞑った。瞼の裏が白く弾けるような感覚とともに、がくがくとつま先まで痙攣する。顔を背ける、ということすらも頭には浮かばなかった。

 だらしなく開いた唇に、レオンの親指が押し込まれた。
 は薄らと瞳を開けて、レオンを見つめる。もうレオンの表情に余裕はなかった。

「っ……」

 ぐ、とレオンの手が腰を掴んで、律動を速める。恥骨がぶつかりあって、結合部がぐちゅりと音を立てる。子宮口をコツコツとノックするように何度も奥を突かれて、追い立てるようにまた限界が迫ってくる。

、」

 レオンが苦しげに呟く。
 搾り取るように蠢いた膣壁を抉るようにして奥まで届いた男根が震えて、吐精した。

 こつん、と額を合わせて、レオンが微笑む。やさしげに眦が細められるのに、その瞳は熱っぽさを失わずに獰猛さを孕んでいる。に埋められたままのそれが、まだ硬さを失っていないことに気づいて、ぎくりと身を強張らせる。

「まだできるね?」

 レオンの問いかけは、の答えを必要としていなかった。

夜に寄り添う砂糖菓子

(あまく、とろりと溶けていく)