開かない扉に向かって祈りを捧げるルセアの背をしばし見つめて、マークは「ルセア」とおもむろに口を開いた。びくりとその背が震えて、美しい金糸が波打つ。
 振り向いたルセアの顔は途方に暮れていて、ともすれば泣き出しそうにも見えた。
 一瞬だけ怯んでしまったマークは、ぐっと拳を作ると己を奮い立たせる。動揺を悟られないように、マークはいかにも軍師らしい、冷静な顔を取り繕った。内心はいまだ混乱に満ちていたが、ルセアに不安を与えるわけにはいかなかった。

「解錠の条件を試してみましょう」

 そう言って、マークは小さな紙片を差し出した。
 膝をついていたルセアが慌ただしく立ち上がり、その紙ごとマークの手を握りしめた。触れる手がひどく冷えている。マークは悲痛そうに歪んだその顔を見上げた。

「で、ですが」
「すみません、ルセア。覚悟を決めてください」

 ルセアが彷徨わせた視線を、足元へと落とす。伏せられた長い睫毛が震えていた。

「わかり、ました……」

 ルセアの手が力なく離れていく。
 くしゃりと歪んだ紙片には”SEXしないと出られません”と書かれていた。



 
 ベッドの縁に横並びに腰かけて、マークは俯くルセアの顔を覗き込んだ。憂いを帯びた碧眼が一瞬だけマークを映して、すぐに伏せられる。
 顔に落ちた髪の毛をそうっと指先で払って、耳にかけてやる。ルセアが小さく身体を震わせて、顔をあげた。

「……マークさん、」

 近くで見れば見るほど、きれいな顔をしている。ぎゅ、と柳眉が歪んで、ふいとルセアが顔を背けた。

「わ、わたしは、聖女エリミーヌ様に仕える身です。やはり、こんなこと」
「わたしは、これが最善策と判断しました」
「……っ」
「あなたも、わたしも。帰りを待っている人がいるはずです」

 ルセアの瞳が戸惑いに揺れる。
 彼の弱みや優しさに漬け込んでいる自覚はある。けれど、そうするだけの理由がマークにはあるのだ。こんなところで、いつまでも時間を潰すわけにはいかない。必ずしも助けがくるとも限らない。

 レイヴァンを引き合いに出せば、ルセアは折れるほかないはずだ。マークは、射抜くようにルセアを見つめた。
 形のよい唇が戦慄く。そこから言葉が発せられることはなかった。

「…………」

 ルセアが諦めたように瞼を下ろした。とっくにどこかへ追いやっていたはずの良心が、痛んだ気がした。
 躊躇いが生じる前に、マークは己の外套に手をかけた。

 床に外套を放って、身を乗り出す。唇を合わせたつもりが、目を瞑るのが早すぎたせいか、ルセアの唇からわずかに横にずれていた。思わぬ感触に驚いてマークは目を丸くし、突然のことに驚いたルセアもまた碧眼を丸くした。至近距離で視線が交わる。
 ふふ、とルセアの小さな笑い声が、唇に触れた。

マークさんも、可愛らしい失敗をするのですね」

 それは、この部屋に入って初めて見た笑みだった。マークは肩から力が抜けるのを感じた。
 もう一度視線を合わせて、マークとルセアはどちらともなく顔を近づけた。ふにゅ、と柔らかい感触がして、マークは今度こそ唇が重なったことを確信する。

 唇を離すと、ルセアが恥ずかしそうに身じろぎした。白い頬が薄く色づいている。
 マークは思わず、まじまじとその顔を見つめてしまった。なるほど、セーラやプリシラが嫉妬するわけである。

マークさん?」

 ルセアが戸惑った声を上げる。マークははっとして、視線を外した。

「いえ、何でもありません。続けましょう」
「は、はい……」

 ぎこちなく頷いたルセアが、躊躇いがちにマークの肩を掴んだ。指の震えが伝わってくる。
 マークが何か言うより早く、ルセアが肩口へと額を預けた。さらりと柔らかい金の髪がマークを撫でる。「この手が触れることを、どうかお許しください」と、泣きそうな声が小さく告げた。

 ──許しを請うのは、マークのほうである。
 最善策だなんて、詭弁だ。こうする他ないのだ。
 マークは口を突いて出そうになる謝罪を飲み込んで、ルセアをぎゅっと抱きしめた。


 僧服の下から現れた白い裸体には、当然ながら胸の膨らみはなかった。普段は襟で隠れている首に、上下する喉仏が見える。ルセアが男性であることなどわかり切っていたはずなのに、いざそれを突きつけられると、なんだか不思議なことのように思えた。
 ルセアが恥ずかしそうに顔を伏せ「貧弱な身体ですみません……」と、消え入りそうに言った。

 そこで初めて、不躾な視線を向けてしまったことに気づいて、マークは慌てて目を逸らした。いつの間にか止まっていた手を動かして、マークは自身のシャツのボタンを開けていく。

「そ、そんなふうには思いません。わたしのほうこそ、貧相で、」

 ルセアの手のひらが肩口に触れて、マークは口を噤んだ。そのまま指先が肌を撫で、シャツが肩から落とされる。明るい室内では互いがよく見えた。たとえば、首筋まで赤く色づいた肌やじんわりと滲んだ汗だとか、普段は目にも止まらない細かな傷跡も──
 それに気づいたルセアが眉をひそめた。「傷が残ってしまったのですね」と、ルセアの手が労わるように傷跡を撫でた。

「小さなものですから」
「いえ、そのように片づけていいものではありません」
「でも、ルセアだって」

 肌理の細かい真白の肌に指を這わせば、ルセアがぴくりと身を揺らした。冷たかったのだろうか、と慌てて引っ込めようとした手を、ルセアにぎゅうと握られる。マークは驚きに目を瞠り、ルセアを見た。

「あなたは、女性ですよ。わたしとは違います」

 真摯な視線に射抜かれて、マークは言葉を失った。ルセアの手がもう一度優しくマークの肩を撫でて、その指を胸元へと走らせた。

マークさんは、貧相なんかじゃありません」

 ルセアがマークを抱き寄せる。肌と肌が触れあって、マークはぎくりと身を強張らせた。マークの剥き出しの肩を、ルセアの髪が滑り落ちる。
 つい、と背中をなぞる指先が、下着の留め具を外した。

「やわらかいですね」

 笑うような吐息と共にちゅっと首筋に唇が触れて、マークは反射的に首を竦めた。

「やわ、らかい?」
「はい。やはり、わたしとは違います」
「そうでしょうか……」

 よくわからずに、首を傾げるマークの顔を覗きこんで、ルセアが優しく碧眼を細める。その瞳が睫毛に覆われていくのを見て、マークは目を閉じた。唇に触れた感触に、ルセアだって柔らかいのに、とマークは内心で首を傾げた。


 優しく触れるだけだった唇がふいに開かれて、マークの唇をやわく食んだ。ぴくり、と震えたマークの背を撫でながら、ルセアの手が恭しくシーツへと導く。小さくベッドのスプリングが軋んだ。

 羞恥も緊張も恐怖も、すべてを呑み込んで、マークはルセアを見つめた。
 何度も頭の中でシミュレーションしたのだから、その通りにすれば問題はない。ただ、口から出そうなほどに拍動する心臓だけは誤魔化しようがなくて、マークはルセアに気づかれないことを祈った。

「……触りますね」

 ルセアの囁き声が落ちて、その白い指先が喉元を下って胸へと伸びる。手のひらが乳房全体を覆って、優しく脂肪を揺らした。そうしながら、肩口の傷跡へと唇がちゅっと触れる。
 その手つきも口づけも視線さえも、何もかもが、まるで壊れものを扱うようで──
 マークは思わず、自分がルセアにとって特別な存在であるかのように錯覚した。そんなわけがないのに。

「ん……っ」

 肌に落ちた唇が触れるのではなく、舌を這わせた。マークの頭を過ぎったのはナメクジだったが、ぞわりと肌が粟立つような感覚は、決して不快なものではなかった。漏れた声にマーク自身が驚いて、咄嗟に結んだ唇に手の甲を押し当てる。

マークさん、どうか可愛い声を聞かせてください」

 懇願するように言われては、首を横には振れなかった。マークはそろりと手を下ろす。
 ふ、と笑う吐息が肌を撫でて、マークは首を竦めた。

 つい反射的に「可愛くなんてない」と口を突いて出そうになるが、マークの唇からは震えるか細い声が漏れるばかりだった。柔らかい唇がそうっと触れては、傷跡を優しく舌がなぞる。
 さらさらと肌を撫でる金糸の感触にすら、声が漏れ出てしまう。

「っふ、う……ん、」

 くるり、とルセアの指先が乳房の上で円を描いた。ゆるやかな刺激を与え続けられて、いつの間にかぷくりと立ち上がった頂を指の腹が優しく撫でる。

「っあ……!」

 甲高い声と共に、身体が跳ねる。ふと、その瞬間にマークは、太もものあたりに硬い感触を覚えた。
 互いに身に着けているものなど、もはや下着のみである。つまり、つまり──思い至ったその感触の正体に、ぶわりと顔に熱が集まる。否、顔だけじゃなく全身が燃えるように熱い。

「は、あ、っひン!」

 ルセアの唇が胸元へ辿り着いて、柔く膨らみを食んだ。その唇は留まることなく、ふるりと震える乳首のほうへと迫る。マークはそれを見ていられずに、ぎゅっと目を瞑った。
 ちゅっ、と小さく音を立てて、ルセアが乳首へと口づけた。知らず、背中が反ってシーツから浮き上がる。

 どれだけ知識があろうと、脳内でシミュレーションをしようと、所詮は机上の空論に過ぎない。実践が思い通りにいかないことなど、マークはいやというほど知っていたはずである。

「や、っ……」

 いやだ、こわい、まって。
 幾重にも蓋をして隠したはずの感情が飛び出してきそうで、マークは慌てて唇を結んだ。

マークさん」
「は、はい……」
「嫌なことがあればおっしゃってください。絶対に、あなたに無体を働きたくないのです」
「だ、だいじょうぶです」

 「ほんとうに?」と憂いに満ちた碧眼を向けられて、マークは目を逸らした。本音が見透かされてしまいそうな気がした。覚悟を決めろと迫ったくせに、怖気づくわけにはいかないのだ。

「いい加減にしてください!」

 半ば叫ぶように言って、マークはルセアを押しのける。その勢いのまま、やけくそな気持ちでルセアを組み敷いた。金色の髪の毛がシーツに広がる。

マークさん、待っ……」

 ルセアが身体を起こそうとするのを無理やり制して、咎める響きを口づけで封じてしまう。
 下着から取り出した萎えかけた陰茎を見よう見まねで扱いて、十分な硬さを取り戻したそれを秘部の入り口へと添える。重なった唇の向こう、ルセアがくぐもった声を上げるが、マークは構わずにその先端を埋めた。

「っ……」

 ぶつん、と音すら聞こえたような感覚がして、焼けつくような痛みがマークを襲った。内腿を伝い落ちるのは愛液ではなく、破瓜による血だ。

「な、にを……!」

 ルセアが半身を起こし、はっと目を見開く。「なにをなさっているのですか!」と、悲鳴じみた声が部屋中に響き渡った。

「何故、ご自身を大切になされないのですかっ」

 ぐ、と掴まれた二の腕にルセアの指先が食い込む。

「黙ってください」
「いいえ! いいえ、わたしは黙りません!」

 ルセアがかぶりを振ると、その美しい髪が左右に広がった。
 ふいにぎゅうと抱きすくめられて、マークは身動きが取れなくなる。「何故こんなことを」と、泣き声にも似たルセアの呟きが、頬を撫でていく。とん、とん、と幼子を慰めるように背中をルセアの手が優しく叩くうちに、ズキズキとした痛みが次第に鈍いものへと変わっていくのがわかった。

「あなたが大事なのです」

 どきりと心臓が跳ねると同時に、きゅうと膣壁が収縮する。ルセアが小さく息を呑んだ。
 なかに埋まるその存在をより知覚してしまって、マークは戸惑う。腕をゆるめたルセアが、そうっと窺うように、視線を合わせた。

「約束します。これ以上あなたに苦痛は与えません。だから、わたしに身を任せてくださいませんか?」

 つい先ほどまでの勢いはすでに消えてしまって、マークは気がつけば小さく頷いていたのだった。



 一度引き抜かれた陰茎が、ゆっくりと押し込まれる。ルセアの舌先もまた口腔内へと差し込まれ、はいってくる感覚が連動するようで、不思議に思えた。舌と舌が擦り合わされて、吸いつかれる。息を吸おうと開いた唇の端から、唾液が溢れて落ちた。
 ぺろ、とルセアがそれを舐めとって、気遣わしげに眉尻を下げる。

「痛くはありませんか?」

 マークは「はい」と、小さく答えた。
 秘部の浅いところをゆるゆると陰茎が動いているが、先刻の痛みが嘘だったかのようにまったく痛みがないのだ。それどころか──

 じわじわとお腹の奥が熱を帯びる、気がする。
 ルセアの安堵のため息が肌をくすぐって、マークは首を竦めた。ちゅ、と輪郭に落ちた口づけが、首筋へと降りていく。
 引き抜かれた陰茎が、再びぬぐぐと押し込まれる。ゆっくりとした動きのせいで、亀頭のかたちがわかるようにさえ思えた。マークは結んだ唇に、手の甲を押し当てる。漏れ出るその吐息があつい。

「ふ……」

 抽挿が少しずつ滑らかになっているのは、決して気のせいではない。にゅぷにゅぷ、と激しくはないその音がやけに耳につく。
 ルセアの手が、わき腹を撫でながら胸元へと伸びる。視線を感じて、マークは顔を背けた。

 膨らみを下からすくい上げ、手のひら全体が乳房を柔らかく揉みしだく。硬くなった乳首が、ルセアの指の間から顔を覗かせる。指先が乳輪をふわりと撫でてから、先端を優しく摘まんだ。

「ぁうん……っ」

 堪えきれずに、マークの唇から甘い声が漏れた。思わず、ルセアを見れば優しい碧眼が見つめ返してくる。

「ふふ、可愛いですね。マークさん」
「な……」

 あまりの羞恥で、マークの顔から首元までがさっと色づく。

「や、やめてください」
「いいえ、やめません。もう、本心を隠したくはありませんから」
「……本心、」
「こんなかたちでも、あなたと繋がれることが、わたしは嬉しいのです」

 ──熱が、体中を駆け巡って、ぎゅうと膣壁が蠢いた。
 ルセアが柳眉を歪めて、小さく呻く。

マークさん、」
「る、ルセアが悪いんです! 急に、そんな」

 ふふ、とルセアの笑い声が唇に触れる。すり、と甘えるように鼻先が擦り合わされて、ぼやけるほどの距離で碧眼がマークを見つめる。

「先に、進ませてください」

 マークは少しの沈黙の後、「ルセアの好きにしてください。わたしは、身を任せるだけです」と、小さく告げた。


 もどかしく思えるほどゆっくりと、少し進んでは戻りを繰り返しながら、陰茎が誰にも開かれたことのない場所を押し広げていく。痛みはないが、違和感と少しの苦しさと──確かな快楽があった。
 亀頭をお腹側に擦りつけられると、ぞわりと腰が震えた。ざわめくような感覚が、どこかに溜まっていく気がした。その未知の感覚が、マークには恐ろしくて、不安だった。軍師らしい顔など、取り繕う余裕はもはやなかった。

「ん、う……っは、あ……ぁ、ルセ、あ……」

 腕を伸ばせば、頭を下げて応えてくれるので、マークはぎゅっとルセアの首に抱きついた。ルセアもまた、抱きしめ返してくれて、マークと彼との間に距離はない。ぴたりと肌がくっついて、互いの鼓動が重なり合う。

「全部、入りましたよ。大丈夫ですか?」
「……ん、」

 こくん、と頷きを返すと、こめかみに口づけが落ちる。
 上体を起こしたルセアの髪の毛が、瞼を撫でていった。触れる肩が、華奢ながら骨ばっていることに、マークは今さら気がつく。

「好きです、マークさん」

 ルセアの声が、祈るように降ってくる。同じ気持ちだと返してよいのかわからずに、マークはただルセアを見つめた。

「ああ、このままあなたを離したくない……」

 離さないで、と言えるほどマークは愚直ではなかった。
 軍師としての自分が、頭を冷やせと警鐘を鳴らす。こんなこと、少しも想定していなかったからこそ、マークは躊躇い臆病になってしまう。目を伏せそうになったマークの頬をルセアの手が包んで、顔を覗き込まれる。

「どうか、今だけは──わたしを見てください」

 ルセアが泣きそうな顔で微笑んだ。

 うんともすんとも言えなかったマークの唇を、ルセアの指先がなぞった。指が離れると同時に、唇が合わさる。唇の表面を舐めたルセアの舌が、そっと隙間を縫って口腔内に入ってくる。

「んぅっ、んふ……っ」

 にゅるりと舌を絡ませながら、ルセアがゆっくりと律動を始めた。
 入り口付近まで引き抜かれた陰茎が、ぬちぬちと埋め込まれていく。繰り返すうちに違和感や苦しさが薄れて、快楽がはっきりとしてくる。ゆっくりゆっくり、ルセアのかたちを覚え込まされるようにして、その熱量と質量とが感じとれてしまう。

 ひどく熱い先端が、口づけるように子宮を優しく押し上げた。その瞬間、ぞくぞくとした感覚が腹の奥から弾けて、全身を駆け巡った。

「あっあっ! あ、アっひ!?」

 瞼の裏で、星が散るような感覚がした。重なっていたはずのマークの唇から、悲鳴にも似た嬌声が漏れる。

「っ、ァあ、マークさ……」

 ぎゅうぎゅうと締めつける膣内から陰茎を引き抜こうとしたようだが、マークの腕が首に縋りついているせいで、ルセアは動きを制されてしまったらしい。なかでびくっと跳ねるような動きを感じると同時に、じわりとした温かさが広がっていく。
 悩ましげに顔を歪ませたルセアが「っ、うぅ」と、艶めかしく呻いた。

 見てはいけないものを見たような気がして、マークはさっと目を伏せた。

「す、すみません、膣内に……!」
「わたしのせいですから、気にしないでください」
「そういうわけにはいきません。マークさん、責任をとらせてください」
「え?」

 わずかに潤んだ瞳に見つめられて、マークはたじろぐ。

「せ、責任って、」
「わたしと結婚してください」

 ぎゅう、と手を握られる。真摯な視線から、マークは目を逸らすことができなかった。
 祈りを込めるように、ルセアがマークの指先へと唇を落とす。触れたところから熱が広がって、マークの全身を赤く染め上げた。

「っ……ッ、ぁ……」

 マークが言葉にできなかったのは、きゅんと高鳴った心臓に呼応するように、膣壁もまたきゅんきゅんと反応してしまったからだ。ルセアがわずかに目を瞠ってから、柔らかくまなじりを細めた。

 ──ルセアのほうがよほど、覚悟を決めていたのかもしれない。
 そうと気づいたって、今さら引き返すことなどできやしないのだ。もっとも、引き返せるとしたってする気など、マークにはさらさらなかった。

七夜ななよえにし

(約束 / 離さない / 覚悟)