ほら、またきたよ。
もう、ストーカー行為だよ。
鷹王の目をそんなことに使うなっての!
「・・・なに?」
いやいや返事をするけど、コイツはニッコリ笑って「お、返事した」って。
「返事しないとするまで呼び続けるじゃん」
「まーなー。」
「毎度毎度ほんとにあきないもんだよ・・」
「だって、俺は好きだからなー。しょうがない!」
本気であきれる・・。
そんな恥ずかしいことよくさらりと言えるな。
~家族みたいなものなのか~
毎日毎日その翼と千里眼で私がどこに隠れてても見つけて飛んでくるんだ。
くるなっての。
飛んできたら翼があるのに私と同じように地面に足をつけて歩く。
とべよ。鳥翼族なら。
前になんで?ときいたら・・。
「と同じ目線で話したかったんだよ」
・・。馬鹿?
私はどっちにしてもうっとーしいんだけど・・・。
気づいてないみたいなんだよなー・・。この馬鹿は。
なんでそんな奴が鷹王の側近??
ほんとに不思議だわー・・。
そんなことを考えてると、不意に名をよばれた。
「なぁ、」
「・・・・。なにさ」
「もし、俺が死んじゃったら寂しい?泣く?」
「泣くか。つか、寂しくない。むしろ嬉しい」
「えー。嬉しいってなんだよー」
ぷーと頬を膨らませて文句をいってるこいつ。
お前はいくつだ!?
子供みたいな顔してんのに、軽く100年はいきてんだもんなー。
すげぇ。いや、こいつがすごいんじゃないくて、鳥翼族がすごい。
本当に毎日。
こんなかみあってない会話を繰り返す。
私がどんなにそっけなくしても、その日は落ち込んでもまた次の日にはいつものように来る。
なんなんだ。
ほんとに。
最近、デイン軍はとうとう四駿の紅一点が動きだした。
プラハだっけ??
まぁ、いいんだけど。
相手が誰だろうと、負ける気がしない。
私の武器は弓。
この軍で弓を使えるのはシノンさんやヨファぐらいだ。
すくねーなー。
関係ないけど。
すっと矢を弦にすべらす。
力強く引っ張って。
放つ。
私たち弓はあまり近づかれると攻撃し返せないからあまり前線なんてでない。
だから今日もこのまま後ろで弓を射ってるんだ。
シノンさんは前線突っ走ってるけどね。
私とヨファはめったに前線なんてでやしない。
でも、今日は後ろからもきやがったんだ。
それも、竜騎士。
いくら弓に弱いといっても、近づけたら攻撃できないし。
ただでさえ竜騎士は力が強い。
私はまだ体力があるからいいけど、問題はヨファだ・・。
避けてほしいけど、そうもいかないだろうし。
逃げるっていっても、竜騎士は飛ぶんだ。きっと追いつかれてしまう。
そうなったらヨファは死んでしまう。
ヨファはまだまだ小さいんだ。
これからの未来だってあるし、何より家族が、オスカーやボーレがいるんだ。
私がおとりになるしかない・・・かな・・。
「ヨファ、次、私があいずしたら前線にいるオスカーのところにいきな」
「え?ま、まって!さんは?さんはどうするの?」
「いいから。・・ほら!いけ!!」
「っ・・!し、死なないでね!!!」
ヨファが行ったことを確認して敵の届く範囲に進む。
死なないでね
か。
私が死んでも誰もなんともないってのに。
あーあ。つまんない一生だったなー。
心残りなんてない。
ただ、最後にあいつともう一回話がしたかったなぁ。なんて。
斧が、肉に、当たる・・感覚。
痛いって言うか、熱い。
そこだけ、あたった場所だけが集中的にあつかった。
そして次は激しい痛み。
私をやった奴の顔を見れば酷く悲しそうな・・。
ってか、あれ?
この人・・・。
「っ・・・ジル!!!!」
声を振り絞ってよんだ。
きっと、この人はジルの知ってる人。
確か、ハールさんだったと思う。
だから、きっとジルが話しかければ分かってくれる。
「!・・・っ・・」
目の前が暗く。
真っ暗。
きっと、私は地獄いきだろうなぁ。
いいけど。
ただ、最後にあいつの顔、みれたらよかった。
ヤナフ・・・・
「ぃ。・・・・。!」
「っ・・・・あれ?・・」
真っ暗だったはずなのに、今、光がみえる。
・・・光とともにあいつの顔も。
瞬間右頬に鋭いいたみ。
耳からパシンとかわいた音。
「った・・」
「馬鹿か・・?」
「は?」
「なんでっ!あんな無茶した!?お前死ぬとこだったんだぞ!?」
「っ・・。ヨファを・・逃がしたかった」
「・・・・・」
「あの子にはまだ家族と呼べる人がいるんだ。
家族を残して死ぬほうも、残されたほうも、・・・悲しいんだ」
「じゃあ、なんでお前が死ななくちゃなんねぇんだよ・・!」
「私には、もう何もないから・・。家族も・・。仲間も・・何も・・・」
また、今度は左頬に。痛み。
「ふざ・・けんな・・!!」
「っ・・・」
「お前、アイクたちがお前を仲間としてたじゃねぇか!!
なのに、お前は仲間だと思ってなかったとでも!?
いいかげん甘ったれんな!!」
「!!!・・・」
「それに・・それに、お前は思ってなかったのかもしれないけど、
俺だって、お前に先逝かれたら悲しいのに・・。
ほんと・・いいかげんにしろ・・」
「・・・ヤナフ」
名を呼ぶと、ヤナフは顔をあげた。
私は、今にも泣きそうなヤナフの顔に両手を添えて自分の唇をかさねた。
触れるだけの軽いキス。
そして唇をはなして、言った。
「ありがとう・・・」
「っ~~~!!!!!」
滅多に見せない微笑。
ちゃんと笑えたのかは分からないけど、お礼をいった。
そのあと、いろいろあった。
ハールさんに謝られて。
傷も回復したし。
なにより、ヤナフがくることが楽しみになった。