頭を撫でる手の感触に、ふと意識が浮上する。寝てしまっていたのだと気がついても、その手の心地よさに、は瞼をなかなか押し上げることができなかった。小さくてやわい手のひらが、の頬に触れる。
ふふふ、と小さな笑い声が降ってきてようやく、は薄く目を開いた。
「あ、起きた?」
ふわふわとした心地の中、ふわふわとした髪の毛が視界に移る。
はぱちぱちと何度か瞬きを繰り返して、柔らかく笑う少女を認識した。
「ジェニーさん……」
「うん」
「ふあ……ごめんなさい、わたし、寝て……」
「いいの」
ジェニーの指先が、やさしくの前髪を梳いた。木漏れ日を受けて、ジェニーの桃色の髪がキラキラと輝くようだった。シスター服も相まってどこか神秘的に見えたが、髪に葉っぱがくっついている。
はぼんやりしたまま、その葉っぱを払ってあげた。ジェニーが恥ずかしそうに首を竦める。
はもう一度瞬きをして、あたりを見回す。
庭の木陰で一緒に本を読んでいたはずだが、どうやら自分はすぐに眠ってしまったらしい。持ってきた本を開いた記憶はあるものの、その内容はまるで思い出せない。朝食を食べてすぐに足を運んだのだが、だいぶ日が高くなってしまっていた。
「さん、いつも動き回ってばかりだから疲れてるんだよ」
「うーん、そんなつもりはなかったんですけど……」
「寝不足はお肌の天敵、ってメイも言ってたよ」
ふに、とジェニーの指がの頬をつつく。
メイとは、彼女がよく口にする故郷の友人である。いつか、英雄としてこちらに呼ぶことがあるのかもしれなかった。こうして話を聞いていると、出会う前からなんだかすでに友達になって気分になってしまう。
「それにね、さんと一緒に過ごせるだけで、わたしは十分うれしいから」
ジェニーがそう言って、はにかむ。
ありがたいような、申し訳ないような気持ちで、は返答に詰まる。ジェニーが本をぎゅっと抱きしめて、の肩に凭れるようにして身を寄せた。
「今度は、いっしょにお昼寝しようね」
ジェニーのやわらかい髪の毛が首元をくすぐる。はぎゅ、とジェニーの身体を抱きしめた。ふわふわとした抱き心地は、まるで陽だまりを腕にしているような気がした。普段の慌ただしさがいまはとても遠い。
「はい、約束です」
ジェニーは自分を甘えん坊だと言うけれど、だって十分彼女に甘えさせてもらっている。